Fear & Greed 指数(恐怖・強欲指数)は、「他人が恐怖しているときに買え」という逆張りの道具として紹介されるのが定番です。FLOWでもこの指数を表示していますが、逆張りには使っていません。使わない理由を、データで確かめたので公開します。

結論を先に書きます。2018年2月から2026年8月までの全履歴3,118日を検証したところ、この指数が明確に効いたのは「強欲」側だけでした。「極度の恐怖だから買い」は、検定の方法を厳しくすると優位性が消えます。つまりこの指数は、逆張り指標ではなくトレンド継続の確認として使うのが、データに沿った使い方です。

1. 何をどう検証したか

  • 指数データ:alternative.me の全履歴 3,118日(2018-02-01 〜 2026-08-19)
  • 価格データ:BTC-USD と ETH-USD の日次終値
  • 測るもの:指数の値でその日を4区分に分け、5日後・10日後・21日後のリターンを集計
  • 比較対象ゼロではなく「無条件のベースライン」と比較

最後の点が重要です。暗号資産はこの期間に大きく上昇しているので、どの区分を切り取っても平均リターンはプラスになりがちです。「恐怖のあと上がった」と言えても、それが何もしないより良かったかは別の話です。全期間の平均(BTCの21日後で+2.56%)を基準に、そこからの差で判定しています。

区分は alternative.me が公表しているものをそのまま使いました(0-24 極度の恐怖 / 25-49 恐怖 / 50-74 強欲 / 75-100 極度の強欲)。独自区分にすると、他所で見る表示と食い違うためです。

2. 結果:21日後リターン

BTC(ベースライン +2.56%、勝率 52.4%)

区分 n 平均 対ベースライン 勝率 対BL
極度の恐怖 0-24 679 +3.00% +0.43% 57.7% +5.3pt
恐怖 25-49 1,086 −0.14% −2.70% 47.0% −5.5pt
強欲 50-74 1,002 +3.22% +0.65% 52.7% +0.3pt
極度の強欲 75-100 330 +8.57% +6.01% 58.8% +6.4pt

ETH(ベースライン +2.79%、勝率 49.2%)

区分 n 平均 対ベースライン 勝率 対BL
極度の恐怖 0-24 679 +4.49% +1.70% 54.1% +4.8pt
恐怖 25-49 1,086 −2.81% −5.60% 39.6% −9.6pt
強欲 50-74 1,002 +5.30% +2.51% 54.9% +5.6pt
極度の強欲 75-100 330 +10.08% +7.29% 53.9% +4.7pt

ここまでだと「極度の恐怖も悪くない」ように見えます。BTCで+0.43%、ETHで+1.70%、ベースラインを上回っています。しかし、これは検定の甘さが生む見かけでした。

3. 重複を除くと、恐怖側は消える

毎日を1標本として数えると、21日後リターンの計算に使う期間が隣の標本と20日分重なります。同じ相場を何度も数えているので、まぐれの一致が本物の傾向に見えてしまいます。

そこで、期間が重ならないように21日ごとに1標本だけ取り直したのが下の表です。

区分(21日後) BTC n BTC 対BL ETH n ETH 対BL
極度の恐怖 0-24 58 −1.86% 58 −2.73%
恐怖 25-49 94 −1.25% 94 −3.04%
強欲 50-74 84 +0.43% 84 +0.22%
極度の強欲 75-100 31 +3.30% 31 +5.05%

極度の恐怖は、BTCでもETHでもベースラインを下回りました。符号がひっくり返っています。一方で極度の強欲は、両方の銘柄で優位を保ったままです。

つまり「恐怖のときに買う」は、この期間・この指数では裏付けが取れませんでした。「強欲のときに強い」だけが残ります。

4. 「変化」に情報はあるか

水準ではなく、3日前からの変化幅でも同じ検証をしました。結果は水準より弱く、使えるものはありませんでした。

3日変化(21日後) BTC 対BL ETH 対BL
急改善 Δ≧+10 −1.16% −2.11%
急悪化 Δ≦−10 −1.45% −4.04%(勝率 −7.9pt)

唯一そこそこ一貫していたのは「センチメントが急悪化したあとも弱い」で、これも反転ではなく継続です。「急改善したから上がる」も成立しませんでした。

5. なぜこうなるのか

もっともらしい説明はこうです。この指数の水準は、実質的に相場の局面そのものを表しています。強欲は上昇相場に集中し、恐怖は下落相場に張り付きます。だから「強欲のあと強い」は「上昇相場は続く」を言い換えたものに近い。

そしてそれこそが、モメンタム(順張り)が機能する理由と同じ構造です。この指数は、逆張りの道具として売られていますが、中身は遅行するトレンド指標だと考えたほうが実態に合います。

FLOW独自の検証とも一致します

FLOWはトレンドの寿命判定でも同じ形の検証をしており、そこでも「過熱→反落」は逆効果(過熱と判定した対象はその後も平均+3%上昇)という結果が出ていました。今回の「極度の強欲のあとも強い」は、外部の独立した指標による裏取りになっています。

ただし違いもあります。トレンド寿命では「売られすぎ→反発」は有効でした(+7pt)。今回、恐怖側は効いていません。これは矛盾ではなく、測っているものが違うためだと考えています。トレンド寿命の「売られすぎ」は価格ベース(50日移動平均からの乖離のZスコア+下降+経過期間)で、局所的な行き過ぎを捉えます。一方センチメントの恐怖は弱気相場のあいだずっと低いままで、底を特定しません。

6. この検証の限界

都合よく読まないために、弱点を明記します。

  • 期間の偏り。2018年2月以降は暗号資産の強気相場が支配的です。「強欲が効く」は「強気相場では上がる」と切り分けられていません
  • 有意性検定はしていません。重複窓は自己相関が強く、素朴な検定は過大評価になります。重複を除いた標本は n=31〜94 と小さく、効果量の確認どまりです
  • 手数料・スリッページ・ドローダウンは未考慮。極度の強欲の局面はボラティリティも高い可能性がありますが、測っていません
  • 対象はBTCとETHのみ。セクター単位では検証していません
  • これは条件付きリターンの調査であって、売買戦略の検証ではありません

7. だからFLOWではこう使う

検証結果に沿って、扱いを次のように決めています。

指数の状態 FLOWでの扱い
極度の強欲 75-100 継続の確認に使う。売り材料としては扱わない
強欲 50-74 弱い追い風。単独では判断材料にしない
恐怖 25-49 弱さの継続と読む。反発の入口とは読まない
極度の恐怖 0-24 買いの根拠にしない。検定で優位性が消えたため

表示場所も決めています。この指数は暗号資産専用なので、全市場のリスク選好ゲージの隣には置きません。暗号資産セクションの中だけに置き、「暗号資産のみ」と明記しています。株やコモディティのセンチメントとして誤読されるのを避けるためです。

あわせて、FLOW自身のセクター資金ゲージ(攻めグループと守りグループの強弱差)と一致しているかを毎日表示しています。測り方の違う2つが同じ結論なら確度は高く、食い違うならセンチメントと実際の資金の向きがずれている局面です。この比較は他所では読めません。

数字の意味は モメンタムの読み方、画面の見方は このサイトの使い方 にまとめています。現在値は ライブ・ダッシュボード の暗号資産セクションで毎朝更新しています。

本ページは投資助言ではありません。掲載した数値は公開データに基づく過去の集計であり、将来の成果を保証しません。特定の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。